連載:文キャン前史 第一回
2, 戸山荘の風景
戸山荘は、東海道五十三次を模して作られた、広大な庭園によって有名でした。
庭園のなかでも際立っていたいくつかの名所を紹介します。
○小田原宿
小田原宿の町並み
戸山荘を一躍有名にしたのが、園内で再現された宿場町の町並みでした。
東海道五十三次を模して作られた庭園は他にもありましたが、宿場町まで作ったのは戸山荘だけであり、またこの宿場町は単なる町並みの再現に留まらないものでした。
○龍門の滝
龍門の滝
園内には「龍門の滝」と呼ばれる人工の滝もありました。
この滝の下には飛び石が設けられており、来客が飛び石を渡り終えた後、堰の板をはずして飛び石を水中に沈ませる、という演出がなされました。
学生会館建替えに伴う発掘調査ではこの滝の遺構が発見され、学生会館内にはそれを示す標識が見られます。
出土した石は名古屋市の徳川園に贈られ、滝の復元がなされています。
○箱根山
箱根山登山道
戸山荘の跡として現在唯一残っているのが、箱根山です。
戸山公園内に位置するこの小山は、早大生にとっても馴染み深いものではないでしょうか。
この山は園内に池を掘った際に出た土を盛ったもので、「麿呂ヶ嶽」「玉円峰」などと呼ばれていました。
箱根山という名前は、小田原宿の復元との関連から、明治以降呼ばれるようになったといわれています。
戸山荘の魅力はこうした美しい風景だけではありませんでした。
では、何が大名たちを惹きつけたのか?次に、具体的なエピソードを挙げながら、紹介していきます。